このような管理統制強化の流れを先取りする先兵が東京都です。「心の東京革命」にしても、10月にまとめられた「緊急提言~子どもを犯罪に巻き込まないための方策」にしても、わかりやすすぎて涙が出てきそう。子どもたちの声も聴かず、深夜外出の規制や深夜立入り制限施設の拡大など、子どもの居場所をさらに奪おうという青少年健全育成条例条例改定も進行中です(12月24日に出た答申原案が北の系2003に掲載されています)。
「緊急提言」については「最近読んだ本」のページで次のようにコメントしておきましたが、都の動きをきちんと批判することが「青少年健全育成基本法」の阻止にもつながるでしょうから、条例改定についてもそのうちコメントを出したいと思います。とりあえず、平野も呼びかけ人になっている条例改定反対署名にご協力を。マンガ規制反対が主眼ですが、青少年の意見聴取のための制度創設(陳情趣旨4)、子どもの権利条約を充分に踏まえた議論(同5)なども要求しています。なお、「緊急提言」についてはてっちゃん@ココログでもコメントされているのでご参照を。
(以下「緊急提言」についての平野のコメント)
ついでながら、犯罪統制にばかり焦点を当てると何が飛び出すかよくわかるのが、東京都・子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会(座長/前田雅英・東京都立大学教授)がまとめた「緊急提言~子どもを犯罪に巻き込まないための方策」(2003年10月)。ガーディアン・エンジェルズ代表の小田啓二氏も委員として参加しています。
「居場所」作りも施策のひとつに掲げていながら、深夜のコンビニ前に子どもたちがたむろすることの防止、より多くの防犯カメラの設置、警察と学校の連携の強化、虞犯少年の送致の拡大、「有害情報や有害環境」からの隔離など、子どもたちなりに見つけ出してきたストリートの居場所を一方的に奪おうとする提言のオンパレード。「子どもと一緒にトイレ掃除を行うことで荒れた学校や問題を抱える子どもを立ち直らせるような活動を……行っているボランティア団体」が「居場所」として位置づけられている(p.10)のは初めて見ましたよ。また、虐待を受けている子どもには避難場所のひとつも作ってあげようと思うようですが(p.15)、盛り場にドロップインセンターを設けて子どもがいざというときに駆け込めるようにしようなどという発想は皆無(pp.32-35)。「親父の会」のことを、実践している人たちにとってはかえって迷惑なんじゃないかと思うぐらい持ち上げているわりに(pp.11-12)、子育ての負担やストレスを一身に背負っている母親を支援するための具体的施策は挙げられていません。
提言の効果をきちんと予測もせず、とにかく目についた問題を何でも規制するという方針で拙速に都青少年健全育成条例を改正しようとしているようですが、子どもの声に耳を傾けようともしないで「最近の子どもは全般的に対人関係が未発達であり、共感性やコミュニケーション能力が欠けていると言われる」(p.8)とはよく言ったものです。そのうちまとまった批判を書こうと思いますが、とりあえず、「思いつきだけで行動するのは……愚か者のすることだ……それを……得意げに話すのは、もっと愚か者のすることだ……」というゴルゴ13の言葉(第104話「スキャンダルの未払い金」リイド社SPコミックス29巻所収)を贈っておきましょう。