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2004.01.29

■子どもの権利委員会終了

国連・子どもの権利委員会による日本の第2回報告書審査が終了しました。

政府の答弁が満足できないものであることは予想の範囲内として、委員もちょっと準備不足だったのではないか、もっと突っ込めたのではないかという不満が残りましたが、まあそれにはいろいろな要因があります。とりあえず主だった問題は取り上げられましたし、最後に2人の委員から「権利基盤型アプローチをとるべきだ」「総合的政策を発展させるべきだ」という、こちらでもっとも強調したかったことが指摘されましたので、あとは明後日の総括所見を楽しみに待つとしましょう。詳細はあちこちで報告原稿を書く予定なのでまたお知らせしますし、国連人権高等弁務官事務所のウェブサイトにプレスリリースも出るはずです。

それにしても長い1日でした。委員会は10時から始まるのですが、今回は88人のツアーを組んでやってきた団体があり、こちら(子どもの権利条約NGOレポート連絡会議)からも30数名の参加者がいましたので、60〜70席しかない会場に入るわけがない。というわけで、かなり朝早く行って席の配分をこちらで考え、とりあえずこれなら平等だろうということで調整を済ませておいたのです。

混乱を心配していましたが、隣の部屋でスピーカーを通じて音声を聴くこともできるように手配され、こちらでも20人は午前と午後で入れ替わるようにローテーションを組み、なんとか大きな混乱もなく済みました。

それにしても、政府代表団も含めれば日本人だけでほぼ150人。日本の審査を聴きたがっていたジュネーブ在住の知り合いも、その話を平野から耳にしてあきらめたほどでした。先週、国連人権高等弁務官事務所で別の仕事をしている知り合いと、

「きっと記録だね」
「そのとおり。この記録はもう破られることはないだろう。次の日本の審査までは」

「いっそパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)の総会場でやろう」

「セキュリティ(警備)の人たちも仕事が増えて大喜びだろう」(皮肉)

「他の国からも同じ人口比で傍聴者が来るとしたら、中国のときが楽しみだ。(会場の目の前の)レマン湖まで人が押し出されるだろう」

などと馬鹿な冗談を言い合いながらげらげら笑っていたのですが、はたして笑い事で済むかどうかと内心途方に暮れていたものでした。締めくくりの冗談は、

「次回はいっそ委員会を招いて日本で審査をやったほうがほうがいい。100人分の旅費があればできるはずだ」
「それはいい。総括所見で勧告してもらおう」

というもの。これもまったくの冗談ではなく、地域ごとにローテーションしながら人権条約機関の審査をやってはどうかという提案もないではないのですが、実際には半端な費用では済みませんし、事務局の支援体制をどうするかという問題もあってなかなか実現困難なようです。

どの人権条約機関でも、日本の審査が行なわれるときは他の国々とは比べものにならない数の傍聴者が押しかけますが、そのなかでも子どもの権利委員会は突出しています。これだけの費用をほかに回せばどれだけ子どもの権利(あるいは他の人々の人権)のために有益な活動ができるだろうと、毎度のことながら嘆息することしきり。今回はわれわれもちょっと多かったのですが。

もちろん人権条約機関の傍聴にはキャパシティ・ビルディング(能力構築)という観点から大きな意味があるのですが、こと子どもの権利委員会に関するかぎり、大規模な傍聴が、国際人権および国連人権機関の活動の理解や世界の子どもの権利保障のための連帯という視点にどのぐらいつながっているのか、疑問なしとしません。「人権」を軸につながっている団体同士では、人権NGOが国連を舞台に今後いっそう効果的な活動を していけるようにいろいろ配慮しようという共通理解と実践が発展しつつありますが、子どもの権利運動の世界にはそういう発想がまだまだ浸透していないようです。

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コメント

上野@JCLUです。
最終コメント、楽しみにしています。明日発行のJCLUのニュースレターでこちらのサイトを紹介します。

投稿: 上野@JCLU | 2004.01.29 17:11

ご苦労様でした。宇江城さん@琉球弧の先住民族会とかも一緒にお元気でしょうか?
ところで、9条1項に関する日本政府の留保って、やめろっていう強い勧告は出そうでしょうか?実は、今、日本で入管に絡んでクルド人とフィリピン人の父母が収容され、3歳の子どもと引き離されるという事件が昨日発生しました。9条1項の留保は、こういうのを正当化するために使われています。

投稿: てらまこ | 2004.01.29 17:50

Ueno-san, Teramako-san, thank you for your comments. I'm going to report more in detail to our fellow NGOs on Friday/Saturday, but quick response from the UN Cyberspace.

Detention and deportation of children of undocumented immigrants was one of the major concerns during the dialogue, and I expect rather detailed recommendations from the Committee on this issue, together with the recommendation to withdraw declarations on Art.9(1) and 10(1).

The issues of Okinawa and Ainu children were also addressed, naturally with the difficulties facing Korean children as well as children from Buraku communities.

投稿: Yuji HIRANO | 2004.01.29 21:00

クイックレスポンス、ありがとうございます。
最終見解、期待しています!

投稿: てらまこ | 2004.01.30 02:14

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