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2004.02.11

■芸能界の子どもの権利

昨日(10日)は「杉並に子どもの人権を守るしくみをつくる会」の連続学習会で話をしたのですが(メインサイトの「講演情報」参照)、演題とは別に、参加者から演劇・芸能界等で働いている子どもの権利について質問がありました。

労働基準法第56条では中学校卒業相当年齢以上の子ども(15歳に達した年度の3月31日を経過した子ども)でなければ使用してはならないことになっていますが、映画製作・演劇等の事業については例外で、行政官庁(具体的には労働基準監督署)の許可を得れば使用できることになっています。これはILO(国際労働機関)の「就業の最低年齢に関するILO第138号条約」などでも認められている例外規定です。神奈川労働局ウェブサイト「高校生などを使用する事業主の皆さんへ」で現行法制の内容がわかりやすくまとめられています。

そこには子どもの権利との関連で考えなければならない問題がたくさん含まれているわけですが、最近話題になっているのは15歳未満の子どもの就業時間の問題。いまのところ演劇等に関しては午後8時~午前5時が深夜労働扱いとなっており、子どもの使用は禁じられています。これに対し、(社)日本演劇興行協会などは少なくとも午後10時までの延長を求めてきました(2003年4月「演劇文化振興のため、子役の就労時間の延長を」)。

他方、1988年に出された通称「光GENJI通達」または「芸能タレント通達」によって、一定の条件を満たせば午後8時以降の活動も認められています。実際にはテレビ出演等は午後9時までという自主規制が一般化しており、それにあわせてか、子役の就業時間も全国一律午後9時までにするという方針が政府内では固まったようです(週刊朝日2003年9月19日号「『モー娘。だけが特別か』 子役の労働時間問題」)。

しかし問題は就業時間だけではありません。子役や芸能タレントがその才能や活動に対して正当な報酬を得られず、固定給料制でかなり搾取されているのではないかという指摘は以前からあります。また、業界でも非常に有名なある芸能プロダクションについては男性アイドルに対する性的虐待の疑惑が公然と報道されているほか、男女を問わず、表に出てこない性的虐待やセクシュアル・ハラスメントが相当横行している可能性もあるでしょう。

それ以上に、芸能タレントや子役のまわりのおとなたちがその子の成長発達や将来をどの程度考えているのかという重要な問題があります。あと1号で休刊してしまう『噂の真相』がかつて「大五郎こと西川和孝殺人事件に見るゲンダイの子役シンドロームの"危険な罠"」(西田健、2000年4月号)という記事を掲載していましたが、人間として成長する環境を保障されずに自分を見失ってしまう子役がはたしてどのぐらいいることか。本当は親のほうが子どもの将来をしっかり考えて子どもや業界のおとなたちにブレーキをかけないといけないのですが、むしろ親のほうが舞い上がっていることが多いので始末に負えません。

就業時間についてはもう少しフレキシブルに考えてもいいとは思いますが、労働基準監督官だけではなくソーシャルワーカーも導入し、子どもの最善の利益にかなう形での監督を飛躍的に強化する必要があると考えています。厚生労働大臣も、業界の声ばかりに耳を傾けるのではなく、かつて子役・未成年タレントだった人々、現に子役・タレントとして働いている子どもたちの実態調査ぐらいやってはどうですか。

なお、国連・子どもの権利委員会がこうした問題を取り上げることはまずありませんが、フランスに対して1回だけ、「ファッション産業における活動への子どものアクセスを、これがケースバイケースのアプローチにもとづいてかつ子どもの最善の利益に照らして行なわれることを確保するために見直す」よう奨励したことがあります(総括所見パラ27、CRC/C/15/Add.20)。

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