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2004.02.19

■子どもの「居場所」ふたたび

「居場所の重要性に関する認識が高まるとともに『居場所』概念が変質する可能性は小さくありません」とで書きましたが、すいません、変質はとっくに始まっていました。文部科学省の報道発表「子どもの居場所づくり新プラン 地域子ども教室推進事業」を見れば一目瞭然。そこにはこう書かれています。

「文部科学省では、全国の学校で放課後や休日に、地域の大人の協力を得て、『子どもの居場所』をつくり、スポーツや文化活動など多彩な活動が展開されるよう、家庭、地域、学校が一体となって取組む『子どもの居場所づくり新プラン』を実施します」

もともと学校に居場所がないから「居場所」づくりが必要とされてきた面も大きいのに、学校のあり方そのものは改めようともせずに学校に「子どもの居場所」をつくろうという発想自体、「居場所」という考え方を換骨奪胎しようとする意図が明らかです。また、ここでつくられようとしている「子どもの居場所」では何らかの「活動」をしなければならず、ただ「居る」ことは許されません。報道発表でも「安全で安心して活動できる子どもたちの居場所(活動拠点)」と定義されており、だったら「居場所」を騙らずに素直に「活動拠点」と言えばいいのです。

そもそも同プランが構想された背景として挙げられているのは「家庭の教育力の低下、地域の教育力の低下、青少年の異年齢・異世代間交流の減少、青少年の問題行動の深刻化」であって、子どもの権利侵害やストレス状況ではありません(「子どもの居場所づくり新プラン(概要)」PDFファイル)。あくまでも学校教育の失敗は認めず、ぜんぶ人のせいにしようとするのですね。で、同プランの構成事業として挙げられているのは以下のとおり。

*家庭(「教育の原点・心の居場所」):「新家庭教育手帳」の作成・配布、家庭教育支援総合推進事業
*地域(「安全・安心な憩いの場、活動の場」):地域子ども教室推進事業(PDFファイル)、子どもの奉仕体験活動等の推進
*問題行動・不登校への対応

げんなりしてきますね。これでは「居場所づくり」などではなく単なる「包囲網」の強化です。これに対し、「い」さんがコメントで紹介してくださった神奈川子ども未来ファンドでは何が目指されているでしょうか。「神奈川子ども未来ファンド概要」では、運営費助成の対象として次のようなNPOが例示されています。

・乳幼児親子の「ひろば」
・ありのままの自分を大切にできる「居場所」
・ひとりひとりの状況に応じたカリキュラムを提供するフリースクール
・「非行」の若者が生き方を探す場
・家庭に居場所がない子どもたちのための緊急避難の場

フリースぺースたまりば」は川崎市(生涯学習振興事業団)の委託を受けて「フリースペースえん」を運営しています。文部科学省も、市民が苦労して発展・定着させてきた「居場所」という考え方の名前だけかすめとるような真似をせず、すなおに市民の自主的活動を支援してはどうなのでしょうか。

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