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2004.03.14

■性犯罪への罰則強化

児童買春・児童ポルノ法の改正とも関係しますが、法制審議会に、性犯罪を含む重大犯罪への対応のあり方の見直しが諮問されています(諮問第69号、2004年2月10日)。

「近年における凶悪・重大犯罪の実情等にかんがみ、この種の犯罪に対処するため、早急に、刑事の実体法及び手続法を整備する必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい」ということなのですが、要は法定刑の引上げですね。性犯罪(刑法第22章)に関わる部分(要綱第2)を見ると、強制わいせつ(刑法第176条)、強姦(同177条)、準強制わいせつ・準強姦(同178条)および強姦致死傷(同181条)の各罪について法定刑の引上げが提案されています。「集団強姦罪・同致死傷罪」が新設され、被害者の告訴がなくても処罰できるようになるという報道もあったようですが、もともと第176条から第179条(未遂罪)の犯罪が集団で行なわれたときは親告罪規定は適用されないので(第180条2項)、これも法定刑の引上げの範囲内です。

そもそも強姦罪の法定刑の下限(2年以上の有期懲役)が強盗罪のそれ(5年以上の有期懲役)より軽いというのもおかしな話だったので、一連の法定刑引上げにはとくに反対しません。とはいえ、諮問どおりに刑法が改正されたとしても依然として不均衡は残ります。ちょっと比べてみましょう。罪名が太字になっているのは今回の要綱で提案されている性犯罪関係の法定刑、強盗関連は現行刑法(第36章)の法定刑です。

(準)強制わいせつ:6月以上10年以下の懲役

*強盗:5年以上の有期懲役(刑法第236条)
(準)強姦:3年以上の有期懲役
集団(準)強姦:4年以上の有期懲役

*強盗致傷:無期または7年以上の懲役(同240条)
*強盗致死:死刑または無期懲役(同240条)
*強盗強姦:無期または7年以上の懲役(同241条)
*強盗強姦致死:死刑または無期懲役(同241条)
強姦致死傷:無期または5年以上の懲役
集団(準)強姦致死傷:無期または6年以上の懲役

やっぱり何かおかしくないですか。せっかく改正するのなら、財物に対する侵害よりも人格的自由や身体に対する侵害のほうが重要だという姿勢は少なくとも明確にすべきではないでしょうか。男女共同参画会議・女性に対する暴力に関する専門調査会の報告書「女性に対する暴力についての取り組むべき課題とその対策」案(PDFファイル)でもやはり下限を3年以上にすることが提案されているだけなのですが。

それ以上に、せっかくこれらの規定に手をつけるならもっと考えてもらいたい問題が山ほどあります。たとえば、性的同意年齢は現行の13歳のままでいいのか(刑法第176条・177条)。この点は国連・子どもの権利委員会からも引上げが勧告されていますし(パラ23(b)・52(e))、平野も何年も前から検討の必要性を指摘していた問題です(「性と子どもの権利:思春期の子どもの性的自己決定権」“人間と性”教育研究協議会編『シリーズ科学・人権・自立・共生の性教育7:性的ふれあい・性交についてどう学ぶか』あゆみ出版・1996年;「世界の一〇代と性的自己決定」季刊セクシュアリティ1号・2001年1月)。斎野彦弥「立法問題としての性的自己決定の保護」(『現代刑事法』47号・2003年3月号)でももっと学術的検討がなされており、そろそろ正面からきちんと議論すべきではないでしょうか。児童買春・児童ポルノ法の制定当時も、性的同意年齢を14歳に引上げることが一度は提案されていました。

次に、「心神喪失若しくは抗拒不能」(第178条)だけではなく、教師や保護者といった優越的地位を濫用した場合、あるいは心身喪失や抗拒不能に達しなくとも未成年者に酒を飲ませて性交渉等に及んだ場合も、処罰対象に含める必要はないのか(前掲「世界の一〇代と性的自己決定」参照)。道府県青少年保護条例の「淫行」規定で対応可能だとの意見もあるでしょうが、本当に必要な保護については国レベルの法律できちんと基準を明確化し、条例の「淫行」規定は廃止すべきです。

その他、被害を受けた子どもの年齢によって法定刑にメリハリをつけ、低年齢の場合には刑を加重する立法例も海外では少なくありませんが、それは裁判所にまかせておけばよく、立法で明確なメッセージを発する必要はないのか。同様に、今回の諮問では公訴時効期間についても見直しが予定されているようですが(要綱第5)、海外のいくつかの立法例と同様、性犯罪については被害者が成人した時点で時効期間が開始されるようにするという対応はまったく論外なのか。

何かといえば処罰の強化しか思いつかず、場当たり的な対応を重ねるのはそろそろ何とかしてほしいものです。

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