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2004.03.17

■サイバー犯罪条約も批准へ?

そういえば、児童買春・児童ポルノ法の改正と関わってサイバー犯罪条約の批准承認案件もすでに国会に提出されているのでした(衆議院ウェブサイト議案経過情報参照)。いろいろと批判の強い条約であり、締約国もいまのところわずか4か国と少なく、はたして批准が緊急に必要なのかも含めてあらためて検討しなければならないことは、「児童買春・児童ポルノ法改正に関する意見書」で指摘したとおり。

サイバー犯罪条約の外務省仮訳(PDFファイル)はすでに毎日インタラクティブ・Digitalトゥデイやサイバー刑事法研究会報告書『欧州評議会サイバー犯罪条約と我が国の対応について』経済産業省(2002年4月)などを通じて流通していますが、若干修正されているようですので、児童ポルノ関連の規定(第9条)のみあらためて抜粋しておきましょう。

第9条 児童ポルノに関連する犯罪
1 締約国は、権限なしに故意に行われる次の行為を自国の国内法上の犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
 a コンピュータ・システムを通じて頒布するために児童ポルノを製造すること。
 b コンピュータ・システムを通じて児童ポルノの提供を申し出又はその利用を可能にすること。
 c コンピュータ・システムを通じて児童ポルノを頒布し又は送信すること。
 d 自己又は他人のためにコンピュータ・システムを通じて児童ポルノを取得すること。
 e コンピュータ・システム又はコンピュータ・データ記憶媒体の内部に児童ポルノを保有すること。
2 1の規定の適用上、「児童ポルノ」とは、次のものを視覚的に描写するポルノをいう。
 a 性的にあからさまな行為を行う未成年者
 b 性的にあからさまな行為を行う未成年者であると外見上認められる者
 c 性的にあからさまな行為を行う未成年者を表現する写実的影像
3 2の規定の適用上、「未成年者」とは、18歳未満のすべての者をいう。もっとも、締約国は、より低い年齢(16歳を下回ってはならない。)の者のみを未成年者とすることができる。
4 締約国は、1d及びe並びに2b及びcの規定の全部又は一部を適用しない権利を留保することができる。

批准承認案件の説明書(PDFファイル)では、「我が国が行う予定の宣言のうち主要なものの概要」として、第9条関連の宣言が2つ挙げられています(説明書5頁)。

*提供又は公然陳列を目的とする児童ポルノの所持及び保管を国内法上の犯罪とすることを除くほか、児童ポルノの保有を国内法上の犯罪としない(第9条)。
*児童の姿態を描写するポルノ(実在する児童の姿態を描写したものと認められる場合を含む。)のみをこの条約上の児童ポルノとする(第9条)。

いずれも留保の範囲が不明確で、批准するにしても、もう少し内容をはっきりさせる必要があります。前者について言えば、1eのうち単純所持を処罰対象から除くことは明らかですが、1dの取得行為も処罰対象から除くのか、「他人のために」取得する行為のみ処罰するのか、それともいま保有している児童ポルノはOKだが新たな取得は処罰対象とするのか、この宣言文だけを見ると判然としません。

後者はもっと意味不明です。国内法を踏まえれば2bおよびcは留保せざるを得ず、そのための宣言だと思うのですが、その趣旨がはっきりしません。だいたいサイバー犯罪条約には「児童」の定義は置かれていませんので、素直に「未成年者」という言葉を使うか、または宣言文のなかで「児童」の定義を明らかにしておく必要があります。

さらに、「児童の姿態を描写するポルノ(実在する児童の姿態を描写したものと認められる場合を含む。)」というのはいったい何を言いたいのでしょうか。「実在しない児童の姿態を描写したものも児童ポルノに含まれる」という趣旨なのか(それなら留保・宣言の必要なし)、それとも「絵やCG画像でも、実在の子どもを特定可能な形でモデルにしている場合は処罰対象とする」という趣旨なのか。

おそらく後者だと思いますが、それならたとえば「実在する児童(18歳未満のすべての者をいう。)の姿態を描写するポルノ(実在する児童を特定可能な形で描写したと認められる写実的影像を含む。)のみをこの条約上の児童ポルノとする」のようにするべきでしょう。むしろ端的に「2bおよびcの規定を適用しない権利を留保する」としたほうがわかりやすいとも思います。なお、ここでいう「写実的」は英語ではrealisticで、絵画技法でいう抽象に対する「写実」ではなく、「本物(実在の子どもを撮影した児童ポルノ)と見まがうばかりの」といったニュアンスであることに注意。

なお説明書11頁では、「条約の実施のための国内措置」として、電波法・有線電気通信法ならびに刑法の改正案がすでに国会に提出されていること、児童買春・児童ポルノ法の改正案も提出される予定であること(提出済)が説明されています。

追記(3月20日):なお、サイバー犯罪条約の国会審議などについては「はてなダイアリー:kitanoのアレ」でかなり細かくフォローされています。

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