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2004.03.20

■ユニセフ公開セミナー報告2

3月17日(水)のユニセフ公開セミナーの後半は、子どもの人身売買についての議論にかなりの時間が割かれました。

まず、厚生労働省児童家庭福祉局の担当者が、児童福祉法改正案(PDFファイル、新旧対照表)について説明。子どもの売買等に関する子どもの権利条約の選択議定書では、第3条第1項(a)で、(i)子どもの性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植または強制労働を目的とした子どもの売買、(ii)「養子縁組に関する適用可能な国際法文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すこと」が、国内外を問わず禁止されています。この規定を担保するため、児童福祉法のいくつかの規定を改正することにしたものです。

具体的には、まず、子どもに対する有害行為の禁止を定めた児童福祉法第34条第1項の第9号について、「児童が4親等内の児童である場合及び児童に対する支配が正当な雇用関係に基づくものであるか又は家庭裁判所、都道府県知事又は児童相談所長の承認を得たものである場合を除き、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為」の下線部分を削除する。親だろうが雇用者だろうが「児童の心身に有害な影響を与える行為」をさせるべきではなく、また家庭裁判所だろうが知事や児童相談所長であろうがそのような行為を認めるべきではありませんので、これは本来子どもの権利条約の批准時に改正されるべきでした。

次に、児童福祉法第60条に新たに第5号を設け、第34条第1項第7号および第9号について刑法第4条の2の国外犯処罰規定を適用することとする。第34条第1項第7号は次のような規定です。

「前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為」

ここでいう「前各号に掲げる行為」は、(a)子どもを見世物等のために利用すること(1・3・4号)、(b)物乞いや有害労働に子どもを使用すること(2・4の2・4の3・5号)、(c)「児童に淫行をさせる行為」(6号)に分けることができます。このような行為のおそれがあるのに子どもを他人に引渡してはならないということです。

これによって選択議定書の規定は担保できるということなのですが、選択議定書第3条第1項(a)(ii)に定める不当な養子縁組斡旋についてはどうなのでしょう。児童福祉法第34条第1項第8号では「成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為」が禁じられていますが、これは国外犯処罰の対象にする必要がないのか、それともすでに他の法律で担保されているのか。選択議定書にいう「不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すこと」には、たとえば子どもの出生前に実親から養子縁組の同意を引き出すことも含まれると考えられますが、この点も大丈夫なのか。いま詳しく論ずる余裕はありませんが、国連・子どもの権利委員会からも養子縁組の監視の強化を勧告されている(総括所見パラ40)ことでもあり、あらためて検討を望みたいところです。

改正案説明後の質疑応答では、人身売買被害者の保護について多くの質問が出されました。いままでのセミナーでは、本当に被害を受けている子どもについての議論になかなかならなかったので、よかったと思います。焦点のひとつになったのは、被害者の収容・退去強制をめぐる問題。平野は、選択議定書第9条第4項(被害者が充分な被害賠償手続にアクセスすることを確保する義務)にも触れながら、人身売買で連れてこられた子どもは安全に帰国できるようになるまで児童相談所等で適切に保護されるのか、児童相談所は法務省による退去強制命令に抗することができるのかなどと質問しました。こうした点は、だいぶ前からウェブに載せているのになぜかあまり参照されていない国連人権高等弁務官事務所「人権と人身売買に関する原則および指針の勧告」でも強調されているところです。

厚生労働省の担当者からは、外国人児童であっても児童相談所の保護の対象にはなるが、退去強制等についてはよくわからないとの回答がありました。会場にいた法務省刑事局職員からは、「一般論としては在留資格がなくても柔軟に対応している」という説明もありましたが、にわかには信じられません。今国会に出入国管理法改正案も提出されており、出国命令の導入によって全件収容主義を崩す方向に進んでいるとの説明もありましたが、少なくとも、加害者の処罰や損害賠償請求といった刑事上・民事上の手続が終了するまで、また被害者が心身ともに回復して自発的に帰国できるようになるまでは在留を保障するモラトリアム制度を設けること、子どもの最善の利益に照らして帰国が不可能もしくは不適切なときは日本への定住を認めることなどの対応が必要だと思います。このほか、人身売買禁止ネットワークの関係者のかたがたからも、子どもの支援体制や社会の人身売買のとらえ方についていろいろと問題提起がありました。

他方で、ECPAT/ストップ子ども買春の会の関係者から、自己決定権論の広がりを「バックラッシュ」と決めつける、首をひねらざるを得ない主張も出てきてびっくり。長くなるのでまた日をあらためてコメントします。

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