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2004.03.30

■条約10周年記念シンポ

29日(月)に開かれた「児童の権利条約」批准10周年記念シンポジウム(主催/外務省・ユニセフ)に参加してきました。

追記(5月7日):外務省による同シンポの「概要と評価」も発表されましたので、そちらも参照。

平野が参加したセッション1「児童の権利条約の意義及び目的」は、ただでさえ50分と時間が短いなかにマルタ・サントス-パイスさん(ユニセフ・イノチェンティ研究センター所長)による基調講演まで入っており、けっきょく押せ押せになってしまって、丸谷佳織・衆議院議員ともども10分ずつしか話せずじまい。コーディネーターの有馬真喜子さん(ジャーナリスト)も含めて全員が国連子ども特別総会に参加したメンバーだったのですが、そのフォローアップなどの話も充分にできませんでした。しかしまあ、短く話すことも重要なスキルだと平野は考えていますし、セッション2以降でなるべく個別の論点について議論を深めることができたほうが望ましいし、言い足りなかったことはウェブサイトで書けばよいし、とにかく草彅剛さん(SMAP)の特別講演にプログラムをずれこませるわけにはいかないし(笑)で、よしとしておきましょう。もっと平野の話を聴きたかったというありがたい声もちらほらとありますが、そのうちメインサイトに話の概要を載せます。

シンポジウム全体はどうしても総花的になりますのでなかなか議論も深まりませんでしたが、印象に残ったのは2点。ひとつは、サントス-パイスさんによる基調講演、ノルウェーで子どもオンブズマンを務めるトロント・ワーゲさんの話をはじめ、独立した子どもの権利救済機関の必要性がしばしば強調されたことです。とりわけワーゲさんは、人権委員会や一般オンブズマンのように多くの問題を取り扱う組織ではどうしても子どもの問題が埋没してしまうとして、「子ども」オンブズマンの重要性を強調していました。国連・子どもの権利委員会は、日本に対しては人権委員会のあり方の見直しを勧告するに留まりましたが(日本に対する総括所見パラ15参照)、やはり子どもの場合には「顔の見える」オンブズマンが必要だとあらためて感じます。ちなみに、今回のシンポジウムでは「子どもの権利の本質」論として意見表明権(第12条)還元主義のような主張を唱えるパネリストもいましたが、ワーゲさんから「権利が具体的に定められていなければ行動などできない」という当然の指摘があったので幸いでした。

もうひとつは、国連子ども特別総会の成果文書「子どもにふさわしい世界」にもとづく国別行動計画の必要性を、とくにサントス-パイスさんが強調していたことです。NGOの世界でもあまり人口に膾炙しないようで忘れられがちですが、平野も発言のなかで簡単に触れておいたとおり、国別行動計画は本来2003年末までに作ることが求められていました。それなのにいまだに手つかずらしいのはどういうことでしょう。

小耳にはさむところによると、政府部内では「青少年育成施策大綱」ができたのでそれを国別行動計画として扱えばよいとの声もあるとのこと。冗談じゃありませんね。青少年育成施策大綱は国連子ども特別総会の成果文書をまったく踏まえていませんし、国連・子どもの権利委員会からも、「青少年育成施策大綱において権利基盤型アプローチがとられ、条約のすべての領域が対象とされ、かつ『子どもにふさわしい世界』と題する2002年国連子ども特別総会の成果文書のコミットメントが考慮されることを確保するため、市民社会および若者団体と連携しながら同大綱を強化すること」と、実質的に全面見直しを促されています(総括所見パラ13参照)。子どもの「規範意識」を云々する以前に、せめて国際的な舞台でやると言ったことぐらいはちゃんとやってください。

それにしても草彅剛さん(SMAP)の取材陣はすごかった。けっきょく70社ぐらい来たようです。日刊スポーツでも「草なぎ剛、シンポジウムでガチガチ」と報じられていたように、勝手の違った場でかなり緊張していたようですが、話の内容も素朴ながらなかなか悪くありませんでした。タレントをこういう形で呼ぶことにはいろいろ意見もあるでしょうが、話の中身が悪くないかぎり、それによって条約への関心が少しでも高まるならよいと思います。ちなみに、特別講演の終了後に喫煙コーナーで一服していたところ草彅さんが通りかかり、1メートルぐらいの至近距離で「おつかれさま」と声をかけあったりもしました。個人的にはどうということもないのですが、うらやましい人はうらやましがってください(笑)。

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