■児童買春・児童ポルノ法意見書
もう先週の話になりますが、民主党から児童買春・児童ポルノ法改正に関するヒアリングに呼ばれて話をしてきました(3月22日)。ユニセフ公開セミナーで問題提起したのを受けとめてくれたのかもしれません。ヒアリングのさい用いた報告レジュメをメインサイトに掲載。
報告レジュメは、基本的には、いままでの意見書や更新日記で言ってきたことを整理して新しい材料を若干付け加えただけです。サイバー犯罪条約については、まずは人権保障の体制を整えることが先決だという主張を新たに加えました。とはいえ、すでに昨日(30日)、衆議院では批准が承認されてしまいましたが(衆議院ウェブサイト議案経過情報)。
ヒアリングでは日弁連の坪井節子弁護士もいっしょで、日弁連の意見書にもとづいてお話をされました。日弁連と平野の考え方は基本的に同じで、児童ポルノの特定少数者への提供(メール送信など)を犯罪化することに反対するか(日弁連)、適用除外規定が設けられることを条件として賛成するか(平野)が少し違います。また日弁連は、児童ポルノの単純所持の処罰化には反対ですが、罰則なしで禁止することについては組織的見解を明らかにしていません。平野は、「児童買春・児童ポルノ法改正に関する意見書」(2003年7月)でも述べたとおり、子どもの権利と市民的自由とのバランスをとる必要性について議員やNGOがあまりにも鈍感な現状では、罰則なしの禁止といえども時期尚早という立場です。
とはいえ問題は児童ポルノの単純所持を禁止するかどうかだけではありません。そこだけに議論が集中しているかのような印象があちこちでかもし出されていますが、平野はむしろ特定少数者への提供や単純製造を犯罪化するさいの適用除外規定を重視しています。適切な適用除外規定が設けられなければ、成人の市民はもとより思春期の子どものプライバシーまで不当に制約されることになり、けっきょく何のための法律なのかという話になってしまうからです。そしてさらに重大なのは、子どもたちに対して「けっきょく子どもの性を規制しようとしている」というメッセージを発してしまいかねないからです。
単純製造について考えてみましょう。いままでもさんざん例に挙げてきましたが、高校生同士なり高校生・大学生なりのカップルがカメラ付携帯電話などでちょっとHな写真を撮ってみたくなるのは、よくある話です。あとあと悪用される可能性も高いのでよっぽど信頼の置ける相手でなければやめておいたほうがよいのは確かですが、だからといってただちに法律で規制すべきものではありません。児童買春・児童ポルノ法も、そういう行為まで規制しようとして制定されたものではありません。
もちろん、同意にもとづいた子ども・若者の性的活動まで規制したいと思っており、そのために児童買春・児童ポルノ法を利用しようとしている人たちも少なからずいます。10代の性規範の崩壊を憂い、禁欲教育を正面から推進しているACTS(10代の性行動の危機を考え行動する会)などはその代表例です。
しかし、児童買春・児童ポルノ法が「道徳」ではなく「子どもの権利」を基盤とするものである以上、やはりこうした人々とは一線を画さなければならない。そうしなければ、この法律が自分たちのためのものなんだということを、子どもたちにわかってもらえないからです。だからこそ、適用除外規定を設けることによって、子どもたちに明確なメッセージを発しなければならないのです。改正に賛成すれば「子どもの権利派」、慎重な姿勢をとれば「加害者側」という恣意的な二分論にもとづいて単純に厳罰化の旗を振っても、児童買春・児童ポルノ法がそもそもの目的を達成することはできません。
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