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2004.04.18

■安野モヨコ「働きマン」

今年になってから読んだ本を順番に載せていると追いつくのに時間がかかりそうなので、新しく読んだ本・見た本を取り上げつつ、古いのはぼちぼち載せていくことにしました。読んですぐやらないと、寸評を書くのにも時間がかかることですし。古いのを取り上げたときは随時お知らせするつもりです。

で、古いネタで恐縮ですが、講談社刊の週刊マンガ誌『モーニング』で「働きマン」(安野モヨコ)という月イチ連載が始まっています。初掲載は3月25日号(3月11日発売)で、4月22日号(4月8日発売)には第2話が掲載されました。Vol.1「女の働きマン」の主人公は、週刊誌でバリバリ働く女性編集者(28歳)です。

第1話を読んだとたん、何じゃコリャと思いました。「仕事モード」がオンになると「男スイッチ」が入って「働きマン」になり、そうなると「血中の男性ホルモンが増加して」、「寝食恋愛 衣食衛生」のことなど忘れて仕事に没頭するのだそうですが、何で「男」スイッチなのか意味不明。もちろん女性の体内でも男性ホルモン(アンドロゲン)は分泌されていますが、男性ホルモンには性欲をたかめる機能もあり、かえって仕事どころじゃなくなりますよ(笑)。

仕事はなんとかソツなくこなしつつも私生活や自分のスタイルを大事にする男性新人編集者(22歳)と、スクープが入れば恋人との食事もすっ飛ばす仕事命の女性編集者との対比も、あまりに通俗的な図式では。主人公が何の必然性もなくタナボタでスクープを拾うところなど、まるで課長(部長)・島耕作の女版ですね。「一緒に仕事をしてきた何人かの女性編集者」を組み合わせてキャラクターをつくった(巻末「モーニングフォーラム」での作者による説明)という経緯にも、バリバリ働く主人公の姿とは裏腹に、いかにもお手軽感が漂います。

それより何より、「仕事」そのものについて、あるいは「報道」とか「編集者」という仕事についての作者の哲学がまったく見えません。第2話でそれなりに作者の考え方を示したつもりのようですが、突っこみ不足。1号前の3月18日号から連載が始まり、消費者金融とは金を「貸してやってる」のではなく「金を借りてもらって利子をいただいて生活して」いる仕事であることをのっけから明確にした「カネが泣いている」(国友やすゆき)とは対照的です。

こういう違和感を感じながらもとりあえず放置していたのですが、はたと思い至りました。これが、いまもっとも力のこもった連載が集まっているマンガ誌のひとつ『モーニング』に載っているからいけない。意表をついて『AERA』(朝日新聞社)に移ればいいと思います。こういう話が好きな読者も多そうだし、手近な知り合いをたどってチャチャッと話を聞いて適当な図式でまとめてみました、という感じが漂う一群の記事のなかにしっくり落ち着くでしょう。『AERA』には、スナイパー・ゴルゴ13ならぬスーパー特派員・亜江良十三(あえら・じゅうぞう)が大活躍する幻の国際情勢レポート(笑)もかつて連載されていたことですし、朝日新聞社出版局さん、よろしくご検討ください。

*幻と書きましたが、亜江良十三の活躍ぶりは単行本にもまとまっています。さいとう たかを+アエラ・プロ(著)『亜江良十三の大報道』(朝日新聞社・1991年)。もちろん平野は持ってません(笑)。

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コメント

批評を読ませていただきました。
こういった意見というのは、作者に対し敬意を払った上で書くのが普通だと思います。
しかし、リンク先にもなっている作者名を堂々と間違っているのはいかがなものかと。
他人の批評をする前に、自分のそういったところを直したほうがよいのではないでしょうか?

投稿: サトウ | 2004.05.16 09:23

上記コメントは本文で安野モヨコさんのお名前を「安野モモコ」と表記していたことに対するご指摘です。これはもうまったく言い訳のしようがありません。作者に失礼をおわびするとともに、サトウさんのご指摘に感謝します。

投稿: 平野裕二 | 2004.05.16 11:23

批評を読ませていただきました。
これを書いた平野氏は安野モヨコさんに何か私怨があるのでしょうか?批評というかどちらかというと重箱の隅をつつくような揚げ足取りの文章に思えてなりません。
仮にもいじめなどをあつかっている人がこのような個人を一方的に攻撃する文を書くというのはいかがなものでしょうか?
自分がこのような事を書かれたらどう思うか?
そのような事をふまえて書く事を心がけてはどうでしょうか?

投稿: 井本 | 2004.05.17 11:12

>自分がこのような事を書かれたらどう思うか?
>そのような事をふまえて書く事を心がけてはどうでしょうか?

あまり気にする必要もないと思うのですが。
「相手を傷つけるかもしれない」というのは話としては美しい気遣いのように見えますが、
そういうエチケットをネット上の自由な意見のやり取りの場にまで持ち込んでも
窮屈になるだけだと思います。
『働きマン』を見つけたのが最近なのでご指摘にある
初期の展開についてはわからないのですが、すくなくとも平野さんは
受け手が抱く感想をまっとうに言っている、ということ以上でも以下でも
ない気がします。
「おもろい」「つまらん」ということを率直に発言することが
作者に対する敬意を欠いた行為とは到底思えないし、むしろ愛あってこその
批判なのでは?

投稿: 通りすがり | 2004.09.11 02:47

エンターテイメントとして表現する際、
女であることを捨て、仕事に徹することに切り替えることを‘男モード’ということで表現したのであろうと思いますが、(変身! みたいなノリで)
‘男性ホルモン(アンドロゲン)は分泌されていますが、男性ホルモンには性欲をたかめる機能もあり、かえって仕事どころでは。..とか、『AERA』にうつればとか....

ちょっとした自分の知識をお披露目したがっているような、重箱の隅をつつくような批評だと感じられました。

投稿: 通りすがり2号 | 2004.10.22 00:35

主人公の職業は「たまたま」編集者であるだけです。
工事の現場監督の話もありましたように
あらゆる労働をテーマとした話なんです。
「報道」「編集者」という仕事についての作者の哲学とか
男性ホルモンの厳密な効能とか
そういう要素を表現するために描かれた物ではありません。
そこを突っ込んだ話だと思いこんで読もうとするから
頓珍漢な批評になってしまうのですよw

投稿: みの。 | 2004.11.26 10:09

追記いたしますとテーマは
「労働に対する作者なりの哲学」でもありません。
「みんな働いてて疲れてて大変だけど頑張ろうよ!」
という応援メッセージ、それだけです。
安野モヨコの作品は概ねそういうものです。
特定の分野に対する知識を深めたかったり
人生哲学を読みたい向きには別の作者をお勧めします。

投稿: みの。 | 2004.11.26 10:17

今さらだけど批判のための批判、としか読めん。とりあえず文句言うのがカッコイイ、と思ってそうな痛さを感じる。漫画読む素養がないなら無理に取り上げないほうがいいのでは。たまたま同じ雑誌に掲載されているだけで、「カネが泣いている」と対比させて論じる必然性はゼロだし、『AERAに移ればいい…」という提案(提案なのか?)も苦笑せざるを得ない、いかにも思いつき。こんな低レベルのエントリがGoogle上位にヒットするのは少なくとも私にとっては迷惑で、情報ノイズでしかありません。

投稿: もけもれ | 2004.12.21 02:40

ほかの皆さんも言っておられますが、全然批評になってませんよ。的外れもいいとこ。
私には名作の香りがしますが。
作り手と成熟している受け手には「お約束」が存在しているのですよ。

投稿: paki | 2005.01.30 11:24

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