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2004.04.18

■「自己責任」論批判の共同声明

本日(18日)朝、たまたまフジテレビ「報道2001」を見ていたところ、またぞろ「自己責任」論について議論していました。なかなかいいことを言っていたのが、意外なことに榊原英資・慶應義塾大学教授。平沼赳夫・前経済産業相や高村正彦・元外相らが拘束された日本人の行動に渋い顔をするなか、NGOやフリージャーナリストの活動にはきちんと敬意を払わなければならないときちんと指摘していました。

しかし拘束されていた5人を非難する論調は強まるばかりです。小泉首相など、「昼夜24時間態勢でいかに多くの人がとりくんだか。退避勧告を無視して出かけた方によく考えていただきたい」「これだけ多くの政府の人たちが寝食を忘れて努力しているのに、なおかつそういう〔イラクに残りたいという〕ことを言うのか。自覚というものを持ってもらいたい」などと語ったとのこと。

更新日記「イラク邦人人質事件」でも触れましたが、在外邦人の保護のために全力を尽くすのは政府の仕事です。できないことはできないと言う、たとえば救援のために自衛隊が武力行使するのは無理だと明確にしておくことは結構ですが、できるかぎりのことはやってもらわなければいけません。非難するなら、民間人を人質にとるという行為そのものを、ひいてはそういう危険な状況をもたらしている勢力のほうを――大義なき戦争に踏み出したアメリカを筆頭に――非難するべきでしょう。

また、今回の人質解放の大きな要因となった日本の市民への信頼を醸成してきたのは、日本政府などではまったくなく、危険な状況のなかで人道援助にとりくんできたNGOの人々です。室井某とかいう作家は「今回のことでいくらの税金が無駄遣いされたのか」などとコメントしたそうですが、安全確保のためにひきこもってろくに復興支援もできず、かえってイラク国内で反発を煽るばかりの自衛隊を派遣し続けるよりはよっぽどましではありませんか。

このような論調に対し、「『自己責任』論による非政府組織(NGO)、市民団体、ジャーナリスト等の活動への批判に憂慮します」と題する緊急共同声明が準備されています。ちょっと抜粋しておきましょう。

「はたして自衛隊や日本の政府がNGOにかわって劣化ウラン弾の被害の調査を行ったり、貧しい子どもたちを支援するといった活動を行ってきたでしょうか。また、政治的な理由に左右されることのない人道支援を行えるでしょうか。戦争の被害を当事国の利害や国益にとらわれずに正確に把握することが果たして戦争の当事国にできるものなのでしょうか。……」

「NGOや市民団体は、政府や軍隊には出来ない多くの分野で支援の実績を達成してきました。この事実は正当に評価されるべきことであっても、『自己責任』の名において批判されるべきではありません。あるいは、戦時のマスメディアがどれほど戦争の真実を伝えてきたでしょうか。軍隊や政府の庇護を受けないフリーのジャーナリストの報道は不要だといえるでしょうか。検閲や自主規制にとらわれないフリーのジャーナリストが戦争の真実を伝えるために、報道の自由に果たした役割ははかり知れません」

私たちがふだん見ている映像にも、ある程度のリスクは覚悟で使命感をもって現地に留まるジャーナリストの手によるものが少なからず含まれています。国際ジャーナリスト連盟の発表によれば、2003年には世界で92人のジャーナリスト・メディア関係者が殺されました。そのうち少なくとも7人は米軍の攻撃によって死亡したとされています(国際ジャーナリスト連盟"Justice for Journalists Killed in Iraq: April 8th Protest")。

自由や民主主義を説くのなら、こうした卑劣な攻撃をこそ非難するべきでしょう。ジャーナリストやNGOが独自に安全確保を図ることは必要ですが、「よけいなことはするな」と言わんばかりの「自己責任」論は世界から真実を奪うだけです。

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