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2004.05.25

■「援助交際」とマンガの関係?

CRINMAIL569号を紹介したときにもちらっと触れましたが、4月27日付ザ・ジャパンタイムズに〈ロリコン〉マンガに関する記事が載っています。国際ECPATによる最新版年次報告書の発行にあわせた記事のようなので、まず同報告書のうち日本について触れた章(Amalee McCoy, 'Blaming Children for Their Own Exploitation: the Situation in East Asia', PDF)を読んでみました。

日本だけではなくタイや韓国などの東アジア諸国でも〈援助交際〉現象が広がりつつあり、その過程でむしろ被害者であるはずの子どもが非難されていることに懸念を示した、全体としては悪くない内容です。タイではストリッパーに制服を着せたり、成人セックスワーカーが学生のふりをして客を誘ったりする例が見られるなど、ティーンエイジャーが性的対象とされること、そしてその重要なツールが〈制服〉であることが日本だけの現象ではないことも明らかにされています。

他方、日本がいまだに「世界の児童ポルノの圧倒的多数を製造している」(produces the vast majority of the world’s child pornography)国とされているのは、明らかな誤りですね。BBCニュースの'Japan clamps down on child porn'という記事(2000年11月日付)をもとにしているようですが、その根拠になっているインターポールの発表を含め、このような印象操作に実態的根拠がないことはすでに明らかになっています。ザ・ジャパンタイムズの記事でも、いまでは日本発の児童ポルノの割合は2%程度にまで減少したと思われるとされています。

出会い系サイト規正法について、「本質的には子どもを処罰するもの」と指摘するだけでさらりと流し、全体として政府の対応の方向性を評価しているのも解せないところです。児童買春・児童ポルノ法や国内行動計画の運用、とくに被害者保護の実態について何らの検証もせず、横浜会議のフォローアップもいまだにほとんど進めず、児童買春・児童ポルノ法の厳罰化およびお茶を濁す程度のキャンペーンで事足れりとしようとしているのを前向きに評価するのは、ちょっとのんきではないでしょうか。もっとも、報告書のほかの部分でもう少しきちんとした評価が行なわれているのかもしれません。

勧告として「子ども参加のための行動」が挙げられているのですが、そこで「インターネットを基盤とした通報ホットライン」しか挙げられていないのも、けっきょく子どもをそれだけの存在としてしか見ていないのかという疑念を抱かせます。政策立案やキャンペーンへの参加を含め、ほかにいくらでも言えることはあるのではないでしょうか。ついでに、ティーンエイジャーの性的対象化の触媒である〈制服〉の廃止も勧告したほうがよいのではないかと言っておきます。もっとも〈禁止〉まではできませんので、ティーンエイジャーが自らの意思でセーラー服等を着るのはとめられませんが。

そこで前述のザ・ジャパンタイムズの記事ですが、上記のような報告書の内容がなぜ〈ロリコン〉マンガに焦点を当てた内容につながるのか、さっぱりわかりません。どうせやるなら、3月に中3女子が出会い系サイト規正法違反で逮捕された事例を含め、被害者非難の動向を具体的に検証したほうがよいと思うのですが、記者もネタ元になった人たちもこういう問題には関心がないのでしょうか。

記事ではECPAT(ストップ子ども買春の会)関係者のコメントが随所で引用されています。
(1)〈ロリコン〉マンガは子どもを性的虐待しても構わないという価値観の促進とメッセージの発信につながり、ペドファイルがその考え方や行動を正当化するのに役立つうえ、社会全体の感覚が麻痺してしまう(発言者の記載なし)。
(2)児童買春・児童ポルノ法の施行にともない、多くの児童ポルノ製造者はアニメや、成人が子どものかっこうをしたフィルムの製造に移行したにすぎないと思われる(発言者の記載なし)。
(3)政府は大衆文化における未成年の性的対象化(eroticization)の防止を試みなければならない(清水澄子・元参議院議員)。

(1)にはそもそも実証的根拠がありませんし、〈ロリコン〉マンガが日本ほど隆盛ではない他の国々でもティーンエイジャーの性的対象化が生じていることを無視しています。マンガが要因のひとつになっている可能性を完全に否定できるわけではありませんが、それが最大の要因であるとはとても思われません。いずれにせよ、〈ロリコン〉マンガがどのように受容されているのかという点も含めた実証的な議論が必要です。

(2)は(1)以上の憶測にすぎません。それで済む人たちなら最初からそうしている可能性が高いでしょう。また、それはそれで子どもの被害防止に役立っているわけですから「移行したにすぎない」(simply turned to)と切り捨てるのではなく、法律の効果を冷静に評価する必要があります。

そして(3)ですが、政府にできるのは〈性的搾取・虐待〉の防止までです。清水元議員も、引用符付のコメントでは「政府は、児童ポルノ・児童買春はよくないと人々を教育するための具体的施策を用意する必要がある」と述べるに留まっており、それなら構わないのですが、地の文で述べられているように「性的対象化」の防止まで政府にやらせようと考えているのであれば、それは行き過ぎでしょう。

記事には東浩紀さんも登場して〈ロリコン〉マンガが犯罪につながるわけではないことを強調していますが、記事全体は規制推進のトーンです。「外国人がもっとも極端な日本のマンガ・アニメまでますます容易に手に入れられるようになれば、政府も、そういう事情がなければ比較的無干渉であり続けてくることができた姿勢の検討を余儀なくされるかもしれない。近年、ヨーロッパや北米で児童ポルノの厳重な取締りが行なわれていることを考えればなおさらである」とも記されています。

これまでにも何度か述べてきましたが、マンガやアニメを規制対象にすれば、手柄をあげやすいそれらの規制に警察資源が一挙に向けられ、児童ポルノ被害者の特定・保護、捜査共助の推進といった課題がいま以上にないがしろにされるのは目に見えています。マンガやアニメが犯罪につながっているという確たる(あるいはせめて蓋然性を明らかにする)証拠もないまま、その規制を運動の最優先順位に掲げていて本当によいのでしょうか。児童買春・児童ポルノの防止と被害者保護のために本当に効果的なとりくみはいったい何なのか、もっとちゃんとした議論がしたいものです。

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