■CRC審査:ミャンマー
26日はミャンマー(ビルマ)の第2回報告書審査でした。強制労働や子ども兵士などさまざまな問題が取り上げられましたが、政府代表団の答弁はあいかわらずのらりくらりとして要領を得ないまま。まあ、ポイント・オブ・オーダー(議事進行上の要求、最優先で対応される)が飛び交った第1回審査に比べると穏やかな雰囲気ではありました。
それはともかく、報告書(CRC/C/70/Add.21)における第12条(子どもの意見の尊重)関連の記述(パラ55−61)がおもしろかったので紹介しておきます。
「子どもの意見の正当な尊重」という見出しで1993年子ども法の関連規定を紹介しているのですが、まず、「必要なときは親、保護者または子の説明を聴取する」から同法で規定されているのは子ども自身の意見が正当に尊重されていることの証明だと主張。それに続けて、子どもに問題が生じたときは社会福祉長官(またはその委任を受けた者)が適宜対応するという趣旨の説明が続きます。さらに法律の実施については、「子どもたちは絵、塗り絵、壁新聞等で自分の気持ちを表現することができる」とされています。
クラップマン委員(ドイツ)は、このような記述に対し、「決定への参加に関する情報がまったくなく、子どもたちはむしろ社会福祉長官の決定に服していることが明らか」、「子どもは官僚的措置の客体であって対話のパートナーではない」と正しく指摘しました。
さらに、国連子ども特別総会(2002年)に提出された同国の報告書に、同国の親子関係の特徴は「愛と畏怖と尊重」であると書かれていることも引いて、このような伝統的態度が蔓延している状態では権威主義的 authoritarian 症候群が広がると指摘。親子関係でも教師と生徒の関係でも、「愛」だけではなく、理を尽くしながらきちんと意見交換やコミュニケーションを図ることが必要だと述べました。ここでは明らかに、権威主義的 authoritarian 子育てと権威のある authoritative 子育ての違いが念頭に置かれています。
第12条に関するピントの外れた理解、主観的・一方的になりがちな「愛」の強調(日本ではこれに加えて「信頼」でしょうか)、政府代表団が繰り返し述べた「子どもは宝」という表現など、ミャンマー(ビルマ)と日本の伝統的子ども観はけっこう似ているように感じました。
追記(6月5日):総括所見(PDF)では「伝統的態度」や「子どもに関して父権主義的かつ権威主義的なアプローチを重んじる傾向」により子どもの意見の尊重が制約されていることに懸念が表明され、子ども参加を重視しながら子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するよう勧告されています(パラ32・33)。
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