■CRC勧告の特徴9
メインサイト「国連・子どもの権利委員会の第2回総括所見(勧告)の特徴」 では8つの特徴を挙げていますが、もうひとつ付け加えておいたほうがいいことに思い当たり、更新しておきました。すなわち、子どもの意見の尊重・参加(パラ27・28)に対する権利だけではなく「いくつかの分野で子どもの自己決定的権利が強調されていること」です。
たとえば表現・結社の自由については、「学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直す」ことが勧告されています(パラ29・30)。「プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施」が勧告されたこと(パラ34(a))も、自己決定的権利の強調という視点からとらえることが可能でしょう。
親の同意要件は、医療上の相談・情報へのアクセスとの関連でも撤廃が求められました(パラ46(b))。同じパラグラフで触れられているリプロダクティブ・ヘルス(パラ46(a))は、もともと自己決定の保障を含んだ概念です。性的搾取との関連で関連されている「教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)」(パラ52(d))も、自己決定能力の育成を促したものと考えられます。
他方で、性的同意年齢の引上げ(パラ23(b)・52(e))や最低婚姻年齢の18歳への引上げ(パラ23(a))の勧告は、これらの分野における子どもの自己決定を制限するよう促すものです。「保護」と「自己決定」のバランスを追求しなければならないことがわかります。
こうしたバランスの追求という点からすれば、とくに親の同意要件の撤廃に関わる勧告はちょっと単純すぎるとは言えます。一定の年齢または成熟度に達した子どもにはこうした分野で独立の行為能力を認める必要があるでしょうが、年齢・成熟度を問わずすべての子どもにそれを認めれば、かえって子どもの利益が損なわれかねません。思春期の健康・発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)でも、もう少していねいな表現が用いられています。
ただ、親権による包括的支配の観念を考え直すことが求められているのは確かです。また、条約も子どもの権利委員会も子どもの自己決定権をいっさい否定していると言わんばかりの一部論調が誤っていることも、今回の勧告であらためて明らかになりました。分野や行為態様に応じたていねいな議論をしていくことが必要です。
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