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2004.06.27

■参院選マニフェスト:自民党

参院選が控えていますので、各政党が子どもに関してどのような政策を発表しているか、順番に検討していきましょう。Yahoo! Japanなどに各政党のマニフェストへのリンクがあります。

まずは自民党のマニフェストから。マニフェストが画像データになっていてテキストのコピーができないのは非常に不親切ですが、それはさておき、子どもに関わる政策の基調は国策教育の推進と治安回復にあると言ってよいでしょう。国連・子どもの権利委員会から勧告された「権利基盤型アプローチ」はもちろん、子どもの権利という発想はみじんも感じられません。

子どもに関わる政策の目玉はやはり「青少年健全育成基本法」の早期制定のようで、「教育改革」の項と「国内治安の回復」の項、2か所で触れられています。このような発想が子どもの権利条約にも国際動向にも逆行していることは更新日記「青少年健全育成法案」(5月13日付)や「各国の青少年対策」(2月12日付)で触れたとおりです。

教育改革は「4.国の基本を見直す」の2番目に位置づけられており、「子どもたちの未来のために人間力を高める教育改革を実行しています」と言いながら「国家の未来」しか考えていないことはばればれ。「人間力」というのも意味不明で、「知育、徳育、体育、食育の各般にわたる施策」を通じて何をしようとしているのか見えてきません。

ちなみに「4.国の基本を見直す」の1番目は憲法改正。6月10日付でまとめられた「論点整理(案)」を見ると、個別的・集団的自衛権の行使の明記、国の防衛および非常事態における国民の協力義務といった戦争準備はもとより、「わが国の歴史、伝統、文化等を踏まえた『国柄』」の規定の導入、「家族や共同体の価値を重視する観点」に立った憲法第24条(婚姻・家族における両性平等)の見直しなど、問題だらけです。

「社会を構成する重要な単位である家族に関する文言を盛り込むべきである」として「国家の責務として家族を保護する規定」の導入も打ち出していますが、あわせて「家族を扶助する義務」を設けようとしていることなども踏まえれば、個人の自由な結合を保障しようとするものでないことは明々白々。マニフェストでは子育て支援・女性の就業支援についても触れられていますが、こんな認識に立っている人たちがやろうとしていることですから、実施の段になって何が飛び出してくるかわかったものではありません。

人権の観点から最大の問題は、憲法の性質を変容させようとしていることでしょう。そこでは、「近代憲法が立脚する『個人主義』が戦後のわが国においては正確に理解されず、『利己主義』に変質させられた結果、家族や共同体の破壊につながってしまったのではないか」、「権利が義務を伴い、自由が責任を伴うことは自明の理であり、われわれとしては、家族・共同体における責務を明確にする方向で、新憲法における規定ぶりを考えていくべきではないか」など認識にもとづき、国家権力を制限する規範としての憲法を「国民の利益ひいては国益を守り、増進させるために公私の役割分担を定め、国家と国民とが協力し合いながら共生社会をつくることを定めたルール」(強調引用者)、すなわち「国民の行為規範」に変えることが目指されています。「国民の精神(ものの考え方)に与える影響についても考慮に入れながら」議論していくとするなど、思想・良心・宗教の自由や多様な価値観の尊重という民主主義の基本的ルールを根底からくつがえそうとしているのです。これで「国際社会から尊敬される『品格ある国家』を目指す」とはよく言ったものだと思わざるを得ません。

最後に、国内治安の回復の面でも子どもの権利への考慮はほとんどなし。同じく与党である公明党がまがりなりにも子どもの安全を重視しているのに対し、「近年の少年犯罪の多発化・凶悪化の傾向は、極めて深刻であ」るという、子どもを問題の根源としてしか見ない偏った認識に立って「青少年の健全育成」を進めようというだけです。このような認識が誤りであることについては、ネット上でも多くの検証結果が公表されています(たとえば「少年犯罪は急増しているか」など参照)。ついでながら、「来日外国人犯罪は、20年前に比べて件数で10倍にもなっており、その温床ともなっている不法滞在者対策が不可欠です」というのが悪質なプロパガンダであることについても、仲晃生「マヤカシの『外国人犯罪増加』論」(1)(2)など多くの指摘が多くの指摘が行なわれているところです。

けっきょく、自民党のマニフェストには子どもの権利の観点から評価できるところはほとんどないということになりました。子どもを自立した個人としてではなく国の資源としてしか見ていないことが明らかですから、それも当然でしょう。

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