■CRC勧告:定時制高校
国連・子どもの権利委員会の総括所見(勧告)をウェブに掲載したとき、真っ先に反応があったのは東京都の定時制高校の職員の方々でした。勧告のうちとくにパラグラフ49・50をビラ等に掲載したいということだったので快く了承しましたが、その後インターネットを見ていると、子どもの権利条約NGOレポート連絡会議訳とは異なる日本語訳も流通しているようです。それによると、パラグラフ50(c)は次のようになっています。
「定時制高校の閉校を再考し、従来の(競争主義的なそれ)とは異なる形態の教育を拡大するよう東京都の関係諸当局に働きかけること」
子どもの権利条約NGOレポート連絡会議訳では、該当部分は「東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大すること」としてあります。代替的形態の教育の拡大が日本政府に対しても求められていると解釈した理由は、更新日記「CRC総括所見:日本語訳微修正」に述べたとおりです。けれども、とくに東京都に対して求められているという解釈も可能ですから、それはよしとしましょう。
けれども、alternative forms of educationを「従来の(競争主義的なそれ)とは異なる形態の教育」と訳すのはいかがなものでしょうか。前に問合せをいただいたときにもお答えしましたが、一般的な用語法では、「代替的形態の教育」というのは〈通常の学校教育に代わる形態の教育〉を指します。たとえば、ストリートチルドレンをむりやり正規の学校に行かせるのではなく、路上で基礎的な教育を受ける機会を提供することなどのとりくみも広がりつつあるところです。ここではとくに、学校からドロップアウトした子どもたちが利用しうる、全日制高校に代わる(夜間定時制を含む)教育形態のことを指していると理解できるでしょう。
したがって、もちろん「過度に競争主義的」ではないことも代替的形態の教育に必要な要素には当然含まれるわけですが、それに留まるものではありません。少なくともカッコ内の注釈は委員会の勧告の趣旨を不必要に狭めるものであって、削除して考えたほうがよいと思います。
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コメント
平野さんに質問ですが「代替的携帯の教育を拡大すること」は、ドロップアウトした子ども達を公教育の範疇外にある「教育機関」に押し付けることにならないでしょうか。つまり平野さんの言葉を逆手にとれば、そうした子どもたちの教育を「ストリートチルドレン的教育」に後退させることになるのでは。
そしてまた、フリースクールのような代替的教育機関はたくさんあるのに、その推奨ではなく、なぜ定時制高校統廃合の再検討があげられたのかについてどうお考えでしょうか。聞かせてください。
投稿: ヤマシタ | 2004.06.06 00:00