■〈非行少年〉の消滅
*土井隆義(著)『〈非行少年〉の消滅:個性神話と少年犯罪』信山社・2003年
少年犯罪は凶悪化・悪質化しているのではなく、むしろ他者に対する想像力の欠如によって「幼稚化」していること、そしてその背景には自己認識の質的変化があることなどを論証した1冊。とくに第1部「少年犯罪をめぐる虚と実」と第2部「『自分らしさ』を煽る社会」ではうなずける指摘がたくさん行なわれています。
このような状況を踏まえれば、犯罪の動機や「心の闇」をしゃかりきになって追ったところで効果的な解決策が見出せるとは限りませんし、社会的文脈を後景に退ける「心の教育」はかえって想像力の欠如を加速しかねません。明治以降に推進された集団主義がうまく機能しなくなっているにも関わらず、学校現場では「いまだに集団主義的な行為規範が根づよく残存したまま」であり、「異なった個と個が対決し、そして対話する技法は、いまだ何も用意されていないに等しい」という指摘(155頁)にも同感です。
他方、第3部「〈非行少年〉の消滅」に少年犯罪に対する処方箋を求めようとすれば、読者は不満を感じざるを得ないでしょう。現在の制度やアプローチについてはなかなか参考になる分析が行なわれていますが、具体的な方向性としては、修復的司法の危うさに注意しながら「新しい修復的司法のメカニズムを構築して」いくことが必要であるという結論に留まっています。人権擁護と保護主義の両立不可能性に関する点も含め、もう少しゆっくり考えてみたい点も少なくありません。
とはいえ、今後の少年司法および犯罪防止のあり方を考えるうえで、本書で展開された認識をきちんと踏まえておくことはいずれにしても必要と思われます。修復的司法についても日本語の本がぼちぼち出ていますので、アマゾンなどで「修復的司法」で検索してみてください。
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