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2004.07.20

■親子の面接交渉権条約

最近読んだ本「EU基本権憲章」で、EU基本権憲章第24条では保護およびケアに対する子どもの権利、子どもの意見の尊重の原則、子どもの最善の利益の原則、両親との面接交渉権が定められていることを紹介しました。面接交渉権だけはきわめて具体的な権利であり、ヨーロッパでこの問題への関心が高いことがわかります。

このような関心の高さを反映してか、欧州評議会も、2003年に「子に関わる接触に関する条約」を採択しました。「子に関わる接触」という文言は、「親だけではなく子も権利の保有者として認めることが望ましいこと」(前文第9段)を踏まえ、「子へのアクセス」に代わる概念として採用されたものです(前文第10段)。ここでいう「接触」とは、次の3つを指すものとして定義されています(第2条(a))。

(a)子が、第4条または第5条にいう者〔注/父母のほか、祖父母やきょうだいなど子どもと家族としてのきずなを有する者、その他締約国が定めた者を含む〕であって子が通常同居していない者と会い、または限られた期間ともに過ごすこと
(b)子とこのような者がいずれかの形で連絡をとること
(c)子に関する情報をこのような者に対して、またはこのような者に関する情報を子に対して、提供すること

子どもの権利条約では、このような親子の接触の維持はあくまで子どもの権利として位置づけられています(第9条3項・第10条2項)。他方、この条約では親子双方の権利であることが明確にされました(前文第9段・第4条1項)。子の最善の利益のために必要な場合にはこのような接触を制限・排除することも可能ですが(同2項)、いずれかの者の監督下での接触その他の形態の接触の可能性が考慮されなければなりません(同3項)。また、上記の注で述べたとおり、父母以外の者との接触を維持する可能性も、権利としてではないにせよ、認められています(第5条)。

子どもに対してはさらに、あらゆる関連情報を受け取る権利、協議の対象とされる権利、意見を表明する権利も認められています(第6条1項)。このようにして表明された意見のみならず、「確認可能な子の希望および気持ち」も正当に考慮されなければなりません(同2項)。子どもの意見の尊重については欧州評議会で「子どもの権利の行使に関する欧州条約」も採択されていますが、今回の条約は、充分に言葉にならない希望や気持ちも考慮するよう義務づけたという点で、これまでの国際文書の水準を一歩高めたと評価できるでしょう。

同条約では、接触命令の実行を国内外で担保するための措置もさまざまな形で定められています。子どもの権利条約第9条・第10条を解釈するさいのひとつの有益な資料として考慮することが必要です。

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