■イギリス:子ども参加ガイドライン
更新日記でも何度か紹介してきましたが(「子どもの権利条約 in イギリス」「各国の青少年対策」)、イギリス政府は2001年、行政の意思決定における子ども・若者参加のガイドラインを作成しました(Learning to Listen: Core Principles for the Involvement of Children and Young People、PDF)。(1)子ども自身の生活について個別決定が行なわれるとき、(2)子どもを対象としたまたは子どもが利用するサービスを地域で策定・提供するとき、(3)国レベルの政策やサービスを策定・評価するときなどのそれぞれの場面で、子ども・若者の声にきちんと耳を傾けるよう、関連各省庁に求めたものです。このような参加は、(a)サービスの向上、(b)市民性および社会的包摂の促進、(c)個人的・社会的教育および発達のために有益だと説明されています。
「中核的原則」として挙げられているのは次の4つ。短いものなのでざっと全訳しておきます。
(1)子ども・若者の参加を得ることに対して明瞭なコミットメントを行なう。それを裏打ちするものとして、参加政策を実施する能力構築のための適切な資源を配分する。
*諸大臣および上級管理職のチームが参加の原則および実践に対して明瞭なコミットメントを行なう。
*参加を省庁の組織的価値観に組みこみ、戦略的計画、サービス提供、資源配分、コミュニケーションおよび実務向上活動に反映させる。
*関連の職員に対し、子ども・若者の効果的参加を得るためのスキルと姿勢を発展させる機会を提供する。
(2)子ども・若者の参加を大切にする。
*子ども・若者に正直に対応する。すなわち、過大な期待も過小な期待も持たれないようにするとともに、参加にともなう実際的・法的・政治的限界を理解するための手助けをする。
*年齢と成熟度に応じた子ども・若者からの意見は真剣に考慮し、対応する。子ども・若者からのフィードバックにより、これを確認する。
*子ども・若者の参加がどのような影響を及ぼしたかについてのフィードバックを、タイムリーに、かつ明確な形で行なう。
(3)子ども・若者に平等な参加の機会を保障する。
*子ども・若者は、人種、宗教、文化、障害、年齢、民族的出身、言語または居住地域によって差別されたり効果的参加を妨げられたりすることはない。
*省庁はもっとも参加しにくい状況にある子ども・若者(たとえば幼い子ども、民族的マイノリティ出身者、農村部や不利な立場におかれた地域に暮らしている者、学校に行っていない子ども、少年司法制度の対象とされている若者、難民、トラベラーの子ども、障害のある子ども、その他の特別なニーズまたは特別な個人的・家庭的状況を有する子どもなど)に積極的に働きかけ、これらの子ども・若者が意見表明の機会を知り、活用できるようにする。
*子ども・若者が効果的な貢献を行なえるよう、必要に応じて支援および訓練・発達のための機会を提供する。
*子ども・若者に対し、関連のある情報をタイミングよく、適切な形式で、専門用語を用いず、文化的に適切かつわかりやすい形で提供する。
(4)子ども・若者参加のための政策と基準を定め、評価し、絶えず向上させていく。
*進展度を測るための原理と成功の基準を最初から定めておく。
*得られた教訓の見直しに子ども・若者の参加を得る。
*省庁は、子ども・若者とともに活動するための質の高い基準と行動規範について合意するとともに、秘密保持と子どもの保護の問題をどのように扱うかについて定めておく。
その他、子ども・若者参加の実践上の問題についても触れられているほか、豊富な実例も挙げられています。
このガイドラインにもとづき、主だった省庁は2002年4月までに行動計画を策定して実施することとされました。最初に行動計画を策定すべきとされたのは、内閣事務局、文化・メディア・スポーツ省、国防省、教育・雇用訓練省、環境・食糧・農村問題省、保健省、大蔵省、内務省、法務省、交通・地方自治・地域省、労働・年金省など。実際に行動計画が出揃ったのは2003年7月だったようです。行動計画の実施は子ども・若者局がモニターし、年次報告(PDF)を発表します。
このガイドラインが実際にどれぐらい実践され、効果を挙げているかについてはまだ充分検討していませんが、こうした姿勢は日本政府や自治体にも大いに見習ってほしいものです。
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