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2004.08.06

■サッカー「反日」騒動

サッカー・アジアカップは日本が中国を3対1で破って優勝ということになりました。おめでとうございます。

優勝争いとは別に日本で大きな話題になったのが、中国人サポーターが激しい反日感情を露にしたこと。サッカーの試合をきっかけに武力衝突まで起こったことがあるほどで(1969年、ホンジュラス対エルサルバドル、リシャルト・カプシチンスキ著『サッカー戦争』中央公論社・1993年参照)、ブーイングぐらいは珍しくないのかもしれませんが、日本人サポーターやグラウンドや選手が乗ったバスに物を投げつけたり、日本の公使の車の窓を割ったり、日本人選手とサポーターが2時間以上も会場に足止めされる状況を生み出したりしたのは、確かに問題があったと思います。北京での五輪開催を危ぶむ声が出るのもしかたがないでしょう。

だからといって、中国側の対応を一方的に非難することはできるでしょうか。今回の騒動については、小泉首相をはじめとして、「スポーツと政治は別なのだから冷静に対応してほしい」という趣旨の発言がしばしばきかれます。一面の真理であり、とくに政治に巻きこまれて翻弄されるスポーツ選手にとってはたまったものではないというのもわかりますが、スポーツと政治を切り離そうとすることそのものが政治的行為であることも間違いありません。

現に、スポーツ(とくにオリンピック)と政治は常に密接な関係を保ってきました。ナチス政権下で開催されたベルリン五輪(1936年)、それに対抗して計画されながらもスペイン内戦勃発で幻に終わったバルセロナ・人民オリンピック、ソ連のアフガニスタン侵攻を理由として日本も含む多くの西側諸国がボイコットしたモスクワ五輪(1980年)などはその象徴的例です。南アフリカがアパルトヘイト体制下にあったときなどは、「スポーツにおける反アパルトヘイト国際条約」という条約まで作成され(1985年国連総会採択、1988年発効、日本未批准)、同国のスポーツ選手は多くの国から国際的交流を拒絶されていました。これらの対応が適当だったかどうかについてはいろいろと議論があるでしょうが、これらの問題とスポーツはまったく関係がないと言って等閑視を決めこめば、結果的には人権侵害に加担することにもつながります。

他方で、スポーツが政治的に利用されてきた例も枚挙にいとまがありません。国民体育大会(国体)の政治性は明らかですし、賭博は禁止されているはずなのにスポーツ賭博だけは政府公認で行なわれているというのもおかしな話です。また、シドニー五輪で金メダルをとった田村亮子(現・谷亮子)選手がその後開かれた自民党大会に招かれたことに象徴的だったように、スポーツ選手はさまざまな政治的キャンペーンに無邪気な無自覚さを露にして登場してきました。

だとすれば、スポーツ選手やファンは、スポーツの政治性を意識しながらそれに関わっていくしかないのではないでしょうか。そもそも、試合の前に国歌を演奏すること自体が露骨な政治的行為にほかならず、ましてやそれが天皇賛美の「君が代」ということになれば、中国人サポーターから競技場を震わすほどのブーイングが出るのも当たり前です。別に国際試合で国歌を演奏する必要はなく、種目ごとの曲を定めても、そのつどイメージソングを作っても、選手(団)のリクエストで決めるようにしてもいいではありませんか。国旗についても同様です(ちなみにニュースでは「日の丸」が焼かれたという報道がほとんどでしたが、画面に映し出された旗を見るかぎり、焼かれたのは日の丸ではなく旧日本軍のシンボルであった旭日旗でした)。

今回の騒動について選手やサポーターの間では冷静なとらえ方が多いようで、ニュースでも背中に「中日友好」と書いたサポーターの姿を見かけました。売り言葉に買い言葉のような対応が主流にならないのは、確かに日本のサッカーファンの成熟度を表したものだと思います。けれども、サッカーをきっかけとしておたがいの国の文化や歴史を知ってこそ、真の友好は生み出されるもの。中国で「反日」教育が行なわれてきたことが今回の騒動の背景にあるという指摘もありますが、日本ではどうでしょうか。教育を通じて歴史の真実をきちんと教えてきた、日本のサポーターは日本軍の侵略の歴史をよく知っている、と胸を張って言えるでしょうか。

それにしても最低だったのはまたしても石原慎太郎都知事です。いわく、「民度が低い国だからしょうがない」。日本軍の行状を充分に伝えてこず、むしろそれを隠すことで「愛国心」を植えつけようとする人々が跳梁跋扈し、総理大臣はじめ多くの閣僚が中国・韓国等から不快感を表明されているにも関わらず平気で靖国神社に公式参拝し、警察やマスメディアも中国人をはじめとする「外国人犯罪」への不安をむやみに煽っているこの国が、中国と比べてどれほど「民度」が高いというのでしょう。しかもそれを、相手の気持ちを無視して中国を「支那」と呼び続けるなど中国人の「反日」感情を煽るひとつの原因となり続けるとともに、日の丸・君が代の強権的押しつけに疑問を呈する教職員を大量処分してきた人物が口にするのですから、開いた口がふさがりません。

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