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2005.02.12

■水の世紀

*村上雅博(著)『水の世紀:貧困と紛争の平和的解決にむけて』日本経済評論社・2003年

ヨルダン川をはじめとする世界の水紛争の状況、水問題解決のためのさまざまなとりくみを政治的・社会的・技術的観点から包括的に解説した本。ワールドウォッチ研究所が唱えた、「緑の革命」(1960~70年代にかけて世界の食糧生産を急増させた技術革命)から「青の革命」が必要とされているという指摘(9頁)にも素直に納得できます。

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2005.02.10

■地図で見る世界の女性

*ジェニー・シーガー(著)/原民子・木村くに子(訳)『地図でみる世界の女性』明石書店・2005年

世界地図で読む開発と人間』のジェンダーに関わる記述があまりにも不十分だったので、あわせてこちらも紹介しておきましょう。「世界の女性」「家族」「出産に関するさまざまな権利」「身体の政治学」「労働」「持てる者と持てない者」「権力」の7つのテーマをもとに、世界の女性の現状をマップ化したもの。教育・保健など数値化しやすい分野についてのマップはよく見ますが、女性の行動がどのように規制されているか、同性愛やレイプに関わる法制がどうなっているかといった市民的権利の分野についてもいろいろマップが載っており、興味深い内容です。

たとえば「女性の居場所」という項目では、(1)「女性に対する宗教原理主義と民族主義の抑圧が法的および社会的規制を高める結果となっている」国、(2)旅券の取得や海外旅行について女性が父親・夫等の許可を必要とする国、(3)女性の服装について強制的なドレスコードがある国、(4)ドレスコードに違反した女性への攻撃が報告されている国、(5)女性が家庭に閉じこめられ(隔離され)ている国の5項目が取り上げられています。(1)について中東諸国が多いのはうなずけますが、アメリカも入っているという点には意外な思いをする人もいるでしょう。「美」という項目では、ミスユニバースの参加国および受賞者を出した国、米国における美容外科件数、化粧品企業の世界進出状況やシェアなどが挙げられており、これも興味深い情報です。

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2005.02.09

■世界地図で読む開発と人間

*伊藤正直(編)『世界地図で読む開発と人間』(旬報社・2004年)

「世界地図で読む」シリーズの1冊。本書では「経済活動と人間開発のインターフェイスに焦点を絞って項目を立てた」(7頁)とのことで、『グローバル経済』と同様、いろいろおもしろい項目が並んでいます。個人的に関心をひかれたのは、主に「科学技術リテラシー:科学技術基礎概念の理解度」(46~49頁)、「国際水紛争:水紛争が起こっている地域」(72~77頁)、「高等教育:高等教育入学年齢と在学年数」(98~101頁)など。

科学技術リテラシーとの関連では、世界科学者会議(1997年7月、ブダペスト)では「科学と科学知識の利用に関する世界宣言」と「科学アジェンダ――行動のためのフレームワーク」が採択され、「科学的知識の生産と利用について、活発で開かれた、民主的な議論が必要とされている」として、4つの新しい科学概念を提唱したそうです(49頁)。最近日本でも理科・数学等の分野で「学力低下」が進んでいるとかまびすしいですが、もう少し広い視野で議論をしたいもの。

水紛争との関連では、「食糧輸入依存度の高い日本では、もし輸入している食糧を自国で生産したとすると水の国内使用量の約70%(640億トン)もの水がさらに必要となる。言い換えると、日本は限りある農業用水の膨大な量を間接的に輸入していることになる」という指摘(75頁)が新鮮でした(水問題については「水の世紀」も参照)。

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2005.02.08

■世界地図で読むグローバル経済

*伊藤正直(編)『世界地図で読むグローバル経済』(旬報社・2004年)

こちらはグローバル経済を視覚的にわかりやすく地図化したもの。その他、こちらで取り上げた「開発と人間」に関するもののほか、「情報とテクノロジー」、「戦争と民族」、「環境破壊と再生」に関するものも出ているようです。

国連NGOが多いのはどの国か(32~33頁)、各国の国内不平等がどのぐらい拡大しているか(106~107頁)、60歳まで生存できない人の人口比と5歳未満児死亡率から見たベスト10・ワースト10はどの国か(118~119頁)など、人権の観点から興味深い地図も載っています。「金持ち上位三人の資産は、後発開発途上国すべてのGNP合計よりも高い。また、世界の上位200人の資産額は、世界全体の合計所得の四一%に達し、かれらがその一%(七〇~八〇億ドル)を寄付するだけで、世界中の全員に初等教育を受けさせることが、その二%を寄付するだけで、一〇億人以上の飢餓を救うことができる」(109頁)という指摘にも、あらためてうなずかされます。

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2005.02.07

■私たちの国際経済

*東京経済大学国際経済グループ(著)『私たちの国際経済:見つめよう、考えよう、世界のこと』有斐閣・2003年

地球環境問題(4章)、人口・食糧問題(5章)、貧困・開発問題(6章)などの社会的課題が国際経済の文脈のなかでわかりやすく解説されています。「はしがき」でも想定読者は明示されていないのですが、どうやら大学の新入生を主な読者対象に想定して書かれた本らしく、入門書としては最適の部類に入るのでは。

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