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2005.04.20

■児童虐待防止法の成立過程

(1)太田誠一ほか(著)『きこえますか子どもからのSOS:児童虐待防止法の解説』ぎょうせい・2001年
(2)石田勝之(著)『子どもたちの悲鳴が聞こえる―児童虐待防止法ができるまで』中央公論事業出版・2005年

(1)は児童虐待防止法の制定に関わった主だった議員が名を連ねた本。第2章でひととおりの逐条解説はなされているものの、「解説」とはほとんど名ばかりの資料集です。参考人陳述や国会審議録が収められていて確かに資料集としては有益ですが、議員が著者として名を連ねるのならば、各議員が何を考えどのように行動したのかせめて一言ずつぐらい書いてほしかったし、論点ごとに審議録を整理するぐらいの手間もかけてほしかった。審議録には発言者の肩書きさえ記されておらず、著しく不親切な本作りです。

それを補ってくれるのが、出たばかりの(2)。衆議院・青少年特別問題委員会で児童虐待問題に関する集中審議が行なわれていたときに委員長を務め、「児童虐待防止法の生みの親だとひそかに自負している」(234頁)のになぜか(1)には名を連ねていない著者によるドキュメントです。まあ「俺が、俺が」で鼻白む箇所も散見されますが、実際著者が法制定の牽引力になった面も大きいようですし、(1)ではうかがい知れない理事懇等でのやりとりも(一方的な記述だと反発する議員もあるかもしれませんが)再現されていて興味深い内容であることは確か。

もっとも、法施行後に児童虐待の通告・相談件数が急増したのは「医師や教師に対する通告義務を罰則つきで強化したことが効いているのではないか」(133頁、強調引用者)という、明らかに誤った記述があるのはどうしたことでしょうか。また、巻末に収録された西澤哲氏(大阪大学大学院助教授)・小宮純一氏(埼玉新聞記者)との座談会では、凶悪犯罪の背景に「子ども時代のトラウマ、虐待経験が関係していることが多い。……どういう環境で育ったかを究明すれば、凶悪犯罪をある程度防げるのではないでしょうか」(245頁)と述べているわりに、警察の介入に慎重な弁護士について、「彼らは少年法の改正強化などにも消極的である。罪を犯した少年に甘い。被害者の人権よりも、加害者の人権を守ろうとする。しかし、それでは、いつまでたっても凶悪な少年犯罪はなくならない」(207頁)と切り捨てているのにも矛盾を感じます。

虐待の「輪廻」ないし「連鎖」があちこちで強調されているのも気になりました。いまではその科学的根拠にも異論が提示されていますし、ラベリング効果や自己成就的予言の側面からも、少なくとも慎重に言及するのが専門家の間では常識/良識となりつつあります。いずれにせよ、「虐待された子は、やがて人を傷つけたり、自分を傷つけたりするようになる。/親になると、今度はわが子を虐待する」という帯のフレーズは、決めつけにもほどがあるというものです。

なお、(2)の座談会に出席している小宮純一記者が担当している埼玉新聞の連載「家族虐待:児童虐待の現場から」は同新聞社のウェブサイトに一貫して掲載されており、有用な情報源となっています。

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コメント

平野裕二さま 埼玉新聞記者の小宮純一です。精力的なご活動に敬意を表しております。私の稚拙な連載に過分なコメントをいただき恐縮しています。なお連載名は「家族虐待」でなく「子ども虐待」です。力不足で「家族」全般まではカバーし切れていません。お時間が許せば、修正していただけると幸いです。

投稿: 小宮純一 | 2005.09.10 06:35

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