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2005.05.01

■CAPへの招待

CAPセンター・JAPAN(編)『CAPへの招待:すべての子どもに「安心・自信・自由」の権利を』解放出版社・2004年

CAP(Child Assault Prevention)が「安心・自信・自由」という考え方を打ち出し、ワークショップを通じて広く普及してきたことは平野も高く評価しています。CAPプログラムを導入する学校が増え、多くの子どもたちやおとなたちにそのメッセージが伝えられていることも、基本的には喜ばしいことだと考えています。

しかし、それは同時に説明責任をますます問われるということであり、きちんとした評価と振り返りが必要でしょう。後述するように本書でもCAPの「効果評価」についての一文は収められていますが、執筆者が一様にCAPを自画自賛しており、自問の姿勢がほとんどないことは気になります。そのこと自体、活動や組織に何らかの問題があることを推測させる徴候にほかなりません。

まず、なぜCAPがこれほど受け入れられるようになってきたかを考えなければならないのではないでしょうか。1996年以降、CAPを学校等で導入する自治体は急速に増え続け、2003年度には計22万人近くが子どもワークショップを受けたとのことです(51頁)。確かにそのことの意味は小さくありません。しかし同時に、そこにはスクールカウンセラーが急速に広がったのと同じ背景があるのではないかとも感じます。ようするに、(1)CAPプログラムをやっていればなんとかなりそうだ、(2)おまけに学校や教師・児童生徒の関係の基本構造には大きな影響を与えないという「安心・安全」感こそが、CAPを受容する土壌を生み出してきたのではないかということです。

もうひとつ、学校の場合にはワークショップへの参加が事実上強制されるのではないかという疑問があります。平野など、もし自分が学校の生徒でワークショップへの参加を強制されるのではないかと考えると寒気がしてきますが、参加しない「自由」というのははたしてどうなっているのでしょうか。児童養護施設では「参加したくない子どもをどうするか」についての「配慮」が行なわれているようですが(43頁、ただし具体的にどうするのかは不明)、学校でそのような配慮がなされているのかどうか、判然としません。

CAPの基本的なアプローチについても、「毒舌満載サバイバー」というウェブログで疑問が呈されています(2005年4月1日「CAPのおかしいところ」)。ひとつには、「被害者の(または被害者となる可能性のある人)の努力によって虐待を防ぎうるという考え方は、虐待や暴力の被害にあったサバイバーの努力不足を責めることにつながる」かもしれないということ。この点についてはおそらくCAPでも配慮されていると思いますが、(潜在的)被害者の責任を問うものでないということは何度でも繰り返して強調する必要があると思います。もうひとつ、「初対面の知らない大人の話を子どもが聞くと言うのは、その大人に『大人という権力』があるから」ということに無自覚な人が多いのではないかという指摘は、学校における参加の強制の問題ともおおいに関連するものです。

「すべての子どもに『安心・自信・自由』の権利を」保障したいという副題の趣旨には賛成ですが、そのことは、すべての子どもにCAPプログラムを受けさせることを意味しません。もちろん、CAPに携わっている人々も、CAPプログラムだけですべての問題が解決すると思っているはずはないでしょう。であるならば、こうした本でやはりCAPの限界(できること・できないこと)をきちんと明らかにしておくべきだと思うのです。

本書に森田ゆり「CAPプログラムの効果」が収められていること(161頁以下)はおおいに歓迎しますが、CAPの「効果」にとどまらず、上述の点も含めた評価・検証が必要ではないでしょうか。その点、桐野由美子さんがもっぱら他のNGOとの「競争」の観点から効果測定の必要性を強調していることは、論考の性質によるものだという背景を割り引いても、非常に疑問です(158~159頁)。何よりもまず子どもにとって本当に役に立っているのかというのが評価の原点で、行政からの資金はその結果としてついてくるものだというスタンスをきちんと打ち出し続けてほしいものだと思います。

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