■体罰の根絶に向けて
*Stuart Hart (ed), Eliminating Corporal Punishment: The way forward to constructive child discipline, UNESCO Publishing, Paris, 2005
子どもの体罰が人権侵害であること、体罰は有害であり効果もないことを指摘し、体罰に代わる建設的な子どものしつけのあり方を提言するためにユネスコと国際子どもの権利発達研究所(IICRD)が共同で制作した本。法的状況、調査研究のレビュー、体罰に代わるしつけのあり方の3部構成で、バランスのとれた内容になっています。
本書によれば、190強の国のうち、親によるものも含めて子どもの体罰を全面禁止したのは15か国のみ。50~60か国で刑事制度における子どもの体罰(体刑)が、60~70か国で学校その他の施設における子どもの体罰が認められているとのことで(p.25)、体罰全面禁止に向けた道のりはなかなか険しそうです。とはいえ、『月刊子ども論』2002年1月号で平野が報告したときには10か国程度だった体罰全面禁止国が5か国増えたわけですから、進展はしています。
ちなみに体罰を全面禁止したのは、禁止年次順に、スウェーデン(1979年)、フィンランド(1983年)、ノルウェー(1987年)、オーストリア(1989年)、キプロス(1994年)、デンマーク(1997年)、ラトビア(1998年)、クロアチア(1999年)、ブルガリア・ドイツ・イスラエル(2000年)、アイスランド(2003年)、ハンガリー・ルーマニア・ウクライナ(2004年)の15か国(p.43)。ヨーロッパでも欧州評議会によって流れが加速しているようですし(CRINMAIL685号参照)、それ以外の地域でも検討を進めている国は少なくないようですから、このリストは今後急速に増える可能性があります。
追記(2007年6月):2007年5月で18か国になりました。「各国の体罰等全面禁止法(年代順)」参照。
また、国連人権委員会・拷問に関する特別報告者であるテオ・バン・ボーベン氏が、2002年、「子どもの身体的および精神的不可侵性に対する権利が公的分野においても私的分野においてもよく保護されることを確保するために十分な措置、とくに立法上および教育上の措置をとる」よう各国に対して求めた(p.31)というのも、従来「拷問」といえば公的分野に限るのが一般的でしたから、興味深い動きです。このような国内外の動向について詳しくは「すべての体罰を終わらせるためのグローバル・イニシアチブ」のウェブサイト参照。
建設的な子どものしつけのあり方としてはハウツーよりも基本的原則を示すことに重点が置かれており、(1)子どもの尊厳を尊重する、(2)向社会的な行動・自制・性格を発達させる、(3)子どもの積極的参加を最大化する、(4)子どもの発達上のニーズおよび生活の質を尊重する、(5)子どもの動機および人生観を尊重する、(6)公正さおよび現状変革的正義を確保する、(7)連帯を促進するという7つの原則が挙げられています(p.93以下)。これだけではよくわからないと思いますが、詳細は本書を読んでいただくしかありません。
体罰に頼らない子育てのあり方について日本語で書かれた本としては、森田ゆり(著)『しつけと体罰:子どもの内なる力を育てる道すじ』(童話館出版・2003年)がお勧めです。体罰がなぜいけないか(第2章)というだけでなく、子どもとのよい関係をつくる10の方法(第4章)、体罰に代わる10のしつけの方法(第5章)を具体的に提案する、小冊ながら中身の濃い1冊。
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